Column

記憶がないことの恐怖

コラム

前回のブログでは、通役になってからお腹の調子が悪くなり、出所した後にいっそう悪化したということを書きました。

向精神薬の量が圧倒的に減って、自分が今まで何をやってきたのか、どんな人生を送ってきたのか、どれだけおかしな人間だったか嫌でも見えてくるようになります。

人を裏切って、嘘をついて、その場しのぎの言い訳をして、本当にどうしようもないな……。

それっていつからなんだろう?私って昔からこんなだったの?
大量にODしていた頃の自分が何をやらかしたのか思い出せない、記憶がない。

そして記憶がないことが怖い。

とにかく怖い。

 

皆さんは記憶を無くすという経験をしたことはありますか?
お酒を飲みすぎてというのはあるかも知れませんが、断片的に記憶はあったりするものです。

夫からの手紙にこうありました。

「退職金を前借りしろとか、俺に生命保険に入るように言ったのを覚えてますか?仮に入っていたとして何に使うつもりだったのでしょうか?」
「○月に渡したお金は何に使ったんでしょうか?」
「○○というのは嘘だったんですか?」

手紙に書かれている内容をほとんど覚えていません。
それを言ったの(やったの)私じゃないんじゃない……?という感じです。

夫からの手紙は1ヶ月に2回来ればいい方ですが、毎回こんな内容です。酷い言い方をすれば、「私の知らない自分」がやったことをずっと責めてきます。

私はその記憶がないから、なんて言っていいか分からない。
記憶がないけどそんなこと言ったんだね、やったんだね、ごめんなさいと手紙に書けば、夫の怒りはまたぶり返します。

「なに開き直ってるの?覚えてないから知りませんじゃないよね?」

この繰り返しが出所まで続きます。

夫からの手紙に書いてある過去の自分がとても怖かった。
大量の薬に依存してきた18年が長すぎて、何が本当の自分が分からなくなっていました。

夫は私の受刑中に一度も面会に来なかったので、面と向かって話をしたのは出所後です。
私のつたない文章力では夫に真意が伝わらず、手紙に書かれている内容はとても自分勝手に見えたそうです。

受刑中に夫が一切面会に来なかったこと、手紙で私を責め続けたことが、その後の私にとってはとてもプラスになったと今は思います。(あのときは本当に本当につらかったです。)

一切私を甘やかさなかったこと、ひたすら考えろと言い続けてくれたこと、自分の変えるのは自分しかいないということを教えてくれたと思っています。

手は差し伸べるけど、その手を掴むか振り払うかは私次第。

昔の私は、自分に甘い人を優しい人だと勘違いしていました。
本当に自分のことを考えてくれる人は、時にとても厳しいものです。

このブログを読んでくださる皆さんには、厳しい意見を言ってくれる人を「自ら」遠ざけることなく、しっかり向き合ってほしいです。

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

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