Column

誘惑に負け続ける依存症子 #2

処方薬依存

前回のブログでは、出所直後は夫に欲しいものを言えず罪悪感を感じていたこと、せっかくタバコをやめたのに今度はスマホのゲームを始めてしまったと書きました。

今日は前回のブログの続きと、私が外に出ることに良いイメージを持たなかった夫ですが、その理由を書いて行きます。

 

ゲーセンが楽しすぎた20代

私は昔から三国志が好きで、25歳~26歳くらいのころは仕事が終わるとゲームセンターへ行き、三国志大戦というカードゲームをプレイしていました。当時は金に物を言わせてレアなカードを買い漁り、毎晩かなりの金額をつぎ込んだと思います。

あまり記憶がありませんが、1プレイ300円で20プレイは必ず遊んでいたような気がするので、1日6,000円は使っていたことになります。

もちろん向精神薬のOD真っ只中、絶賛依存中です。

今思い返せばお金が超もったいない!アホ症子!そのお金が今あればどれだけ……という後悔は置いといて、何故このゲームにそれほどのめり込んだのか、今も分かりません。(笑)面白かったのは確かなんですけどね。

↑これが三国志大戦です。

このころは大きな筐体のゲームが流行っていたように思います。競馬、麻雀、クイズ、巨大な筐体がゲームセンターに所狭しと並んでいました。

全国の人とオンライン対戦ができる、今となっては家庭用ゲーム機で当たり前にできることを、ゲームセンターでやるのが楽しかったのです。

最近のカードゲームは分かりませんが、あのころはレアなカードを持っていると「おっ…こいつ結構金掛けてんじゃん!」と思って熱くなったものです。

 

過去がちらつく、よみがえる

出所後にスマホで始めたゲームも、同じ三国志でした。今はもうなくなってしまいましたが、三国志乱舞というスマホゲームです。

ほかにもゲームはたくさんあったのに、過去に大枚をつぎ込んだ「三国志」に結局行き着いたというのも、また興味深いなと思います。

依存脳復活!ということで過去も見事によみがえりました。三国志大戦をゲームセンターでプレイしていた感覚を、無意識のうちに味わいたい!と脳が判断したのだと思っています。

 

手を出したらもう止まらない

初めての課金は3,000円。コンビニでGoogleプレイカードを購入します。

出所後にタバコに手を出し、自力で止められず禁煙外来を受診した。チャンピックスという禁煙補助薬を飲み、タバコを吸うと気持ち悪くなるのが分かっていても、吐き気でおえぇ…となっても吸う。

やっとの思いでタバコをやめられた。今度こそ気を付けないと!もちろんそう思いました。

でも、ゲームへの課金が止められなくなりました。

報奨金はたった2万円弱、3,000円使ったら残り17,000円です。ゲームの面白さに気付き、チームに所属するようになりました。知らない人とチャットで会話します。

今の自分、過去の自分を知らない人と、現実から離れてチャットをすることが、とても楽しかったんです。

チームに所属すると、ある程度参加しないと他の人に迷惑が掛かるので、必然的にゲームをする時間が増えていきます。スーパーへ買い出しに行くときも、必ずゲームを起動するようになりました。

皆さんのお察しのとおり、報奨金はすっからかんになりました。

 

刑務所で人生を振り返ったはずなのに、なぜ?

これまで私の過去ブログを見てくださっている皆さん、「依存症子は刑務所で散々過去を振り返っているのに、なんでまた同じことを繰り返すの?」そう思いませんか?

ここに私の大きな勘違いがありました。勘違いと言うか、甘え。

それは、「犯罪になりそうな依存対象に気を付けよう!」としか思わなかったことです。

犯罪になりそうな依存対象。これは人それぞれだと思います。私の場合は薬物、窃盗、ギャンブル。

ギャンブルは国が認めているから犯罪ではありませんが、ギャンブルにお金を注ぎ込もうものなら、私はまた夜の仕事や風俗へ走ります。そうなれば規則正しい生活は崩れ楽な方に逃げる。これが受刑者になる前の依存症子です。

夜や風俗に戻るようなことがあれば、怪しい薬はいくらでも手に入る。今はTwitterに山ほど売人がいる、20年前よりはるかに簡単に薬物が手に入ってしまいます。

薬物、窃盗、ギャンブル、この3つに手を出せば私は必ず刑務所へ舞い戻る。

これだけは、痛いほど理解していたのです。

 

じゃあタバコやゲームに依存したらどうなる?何が起こる?

犯罪に直結しない依存対象までは、深く考えていなかったんです。要は私の考えが甘かった。

出所後は、中で考えていたよりも厳しい現実が待っていました。自分だけが世の中から取り残されたような感覚に陥り、刑務所に居た時間を取り返さなきゃ、何とかしなきゃという焦りも生まれます。

外の世界に依存対象が溢れていることに、考えが及ばなかった。

3つに絞って考えすぎて、犯罪とされていない依存対象に注意が向きませんでした。あのころの私は視野がとても狭かったのです。

報奨金が尽きたとき、考えました。

 

私は依存症者なんだから、あらゆる“モノ”に注意しなきゃダメなんじゃね?

○○依存症だから××には依存しない、と思ったら大間違いです。

実際に私は多数の依存症がクロスしています。今はお酒は完全にやめましたが、何かをきっかけに飲み始めるかも知れません。

タバコにスマホゲームと、立て続けに依存脳へ戻ってしまった私。報奨金はなくなり、もう課金は出来できません。

ここで止まることができたのは、夫を失いたくなかったから。もう絶対に刑務所へ戻らないと決めたから。

以前のブログ(転落はあっという間に)にも書きましたが、理性のタガが外れるのが依存症と言う病気です。依存症が進行すると、タガが外れたことにも気付けません。

夫とこれからも更生する生活を送るのか?夫に隠れて課金し、嘘をついてお金を要求し離婚される未来を取るか?

どちらが大切か、天秤にかけられる心の余裕と頭がまだあった、ということです。

 

ところで、なんで私ゲームやってんだ???

そもそもなんでゲームをやっているんだろう?と考えました。

答えは暇だから。

そうよ、今私は暇なんだ。暇つぶしにやる行為が依存行動につながる。じゃあ仕事をしよう!

何かに集中しすぎてしまうのは、アディクションあるあるです。それが暇つぶしでも遊びでも。

仕事に就こうと考え、求人を見るようになります。私は刺青が全身に入っている、だから制服に着替えるような場所では働けない、足を出すような服装はできない。

いくつか選んで夫に提案します。「そろそろ働こうと思うんだけど…」

前回のブログに貼った特別遵守事項に書いてある、「就職活動を行い、又は仕事をすること。」、これを実行するときが来たのではないか。

夫からはあまり良い返事は返ってきませんでした。「症子が仕事に行くと金がかかる」、と言われてしまったのです。

仕事に必要なものを買っても、給料日まで続かない私

受刑前の私は、仕事を始めると言っては夫に何かを買わせていました。

例えばパチンコ屋で働くから動きやすい運動靴とか、刺青を隠すためにサポーターとか、服とか、化粧品とか。

夫の記憶は、受刑前の私のままなのです。

今までやったことのない、食事を作って掃除をして洗濯をして、家事を一生懸命頑張っている姿を見ても、私のことを完全に信用できない。(今も100%の信用はしておらず、80%ほどだと言います。)

昼間の仕事が続いた試しがない、そんな私しか見ていない夫からすれば、私の提案は全て却下せざるを得ない。

出所後の私の体調は、決して良いものではありませんでした。今も夫と不思議だねと話をするのですが、1週間に3日は微熱がありました。今ではだいぶ改善されましたが、すぐにお腹を壊していました。

そんな私の様子を見て夫は、「今の症子が働いてもすぐ辞める羽目になるし、職場に迷惑がかかる」と思ったそうです。

 

私にできること、探そう

私が外に出ることに夫がいい顔をしないのは、自分がやってきたことの報いです。

外に出る度に薬を貰って帰ってくる、部屋に見知らぬものが増えている、お金は派手に使う、借金もしてくる、事故は起こす、警察は来る。

こんなことが続けば、家族が疲弊するのは当然です。「外に出ないで大人しくしていてくれよ」と思うのが家族です。

だからと言って、働かずにずっと家に居続けるわけにはいかない。私はスマホゲーム以外に熱中できることを探しました。暇にならないために、動き続けられることはないか探しました。

何か自分にできることはないか?やれることはないか?

こうして、今の依存症子の方向性を決める出来事へ向かって、進み始めます。

 

前回のブログでいただいたコメントについて

依存症は一生治らないと症子さんは言っているので、何かで発散するのは仕方がないのでは人は完全ではないので、誰もが心の中に溜まってしまう病みを何かで発散していると思う。法律に違反せず周りを不幸にしない、これを壊さなければある程度のストレス発散はやむを得ないのでは?

というコメントをいただきました。

「人は完全ではないので、誰もが心の中に溜まっていく病みを何かで発散している」という部分、とても共感します。

依存症者だけではなく、どんな人も気持ちが病んだり落ち込んだりしますよね。こちらのコメントの通り、辛いときに発散できる場と方法が、人間には必要だと思います。

残念ながら、私はスマホゲームの課金をコントロールできませんでした。今回のブログは思いとどまることができた、引き返せて良かったという内容ですが、これがカジノだったら?向精神薬だったら?と思うと恐ろしいです。

法律に違反せず周りを不幸にしないことが、依存症者には難しいことなのです。

前向きに回復しようと努力している依存症者は、自らストレス発散の方法を探しています。

中には人に聞くだけ聞いて、実践せずスリップしている人もいますが、そういう人は本気度が足りないだけだと思っています。

え?依存症は病気なんでしょ?本気度って、それじゃ意思も関係してくるじゃん!と思った方がいらっしゃると思いますが、

最終的にやめ続けることができるかは、本人の意志次第です。

 

自分が依存症であることに真剣に向き合っている人は、今も回復を続けることができていると私は思います。

意志が弱いからなるものではないのが、依存症という病気です。

でも、回復し続けるには意思が必要です。

このあたりが依存症者も、依存症者のご家族も、なかなか理解しにくい所だと思います。

Twitterでフォローさせていただいているギャンブル依存症のはやとさん、真剣にご自身と向き合っている方の一人です。

前向きに回復している依存症者がどんなことをやっているのか?何を考えているのか?自分で情報収集して、自分で考えて、実践されている方です。

はやとさんは昨日現在(2021/9/9)、最終スリップからギャンブルをやめ続けて145日目です。

たった145日?そう思う方もいらっしゃると思いますが、スリップをして再度やり直すというのは、気力と勇気が必要です。

はやとさんの依存症克服方法の一つに運動があります。歩く走る筋トレする、これはストレス発散にもなりますし、依存症子的にもおススメです。

ちなみに私はヨガをやります。ヨガは心を前向きにさせてくれて、呼吸を深くしてくれます。動くことは、依存症回復を続けるのにとても効果的です。

いつもコメントをくださる皆さん、どうもありがとうございます。

そして今回ご協力いただきましたはやとさん、本当にどうもありがとうございました。

これからも一緒に、今日賭けない、やらない1日を!

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

最近は多くの方からコメントをいただきます。こちらのHPをご覧の皆さん、こちらの元記事のアメブロのコメント欄もぜひ参考になさってください。

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