Column

帰る場所

薬物依存

前回のブログでは文春オンラインに記事が掲載されたことで、起きた反響について書きました。

いいねとコメントをたくさんいただきました。実名を出したことで身が引き締まり、自分の目標や決意を、改めて明確にできたと思っています。皆さん本当にありがとうございます。

受刑者や依存症者の“帰る場所”

受刑者は、刑期が終われば刑務所を出所し、家族の元へ、大切な人の元へ帰ります。
依存症者が治療のために入院していたとして、治療が終われば、同じように家族の元へ、大切な人の元へ帰ります。

その“帰る場所”の環境が悪いと、どんなことが起こると思いますか?

今日はそんな“帰る場所”についてのお話です。

・現在大切なご家族が、彼氏彼女が、刑務所へ行っている待ち人さん。
・依存症者の一日も早い社会復帰を、心から願うご家族の方。

そんな方々に読んでいただきたいと思います。

ある家族のパターン

父親(55)、母親(53)、結婚して子どものいる長男(30)、長女(28)の家族がいるとしましょう。長女が薬物で服役中、刑期は3年です。

長女が逮捕されたことで、家族の関係がおかしくなります。

父の怒りは頂点で、世間体を気にし、母はショックで泣いてばかり、結婚している長男は奥さんから「子どもに悪影響が出るから付き合いはしない!」と言われてしまいます。

夫婦喧嘩が、絶えません。

・父親は、「お前の育て方がおかしかったから長女はこうなったんじゃないか!?」と妻を攻め立てます。

・母親は、「子どもたちを気にかけたことなんか無いじゃない!都合の悪いことはそうやっていつも私……。あの子が可哀想!」と夫を腹立たしく思い、悲しさでいっぱいになります。

・長男は、そんな両親の喧嘩に嫌気がさし、妻からも実家と付き合いをしたくないと言われた手前、妹の事にはノータッチを貫きます。

この状態が続く家に長女が帰ってきたら、どうなると思いますか?

 

私が想像する、この家族の行動パターンを考えてみます。

・父親はこれからは真面目にやれと、過去のことを叱責します。娘をしっかり見ろと、妻にも怒りを向けます。

・母親はその状況にハラハラしながらも、娘を庇うことしかできません。娘の再犯を恐れ、信じる事もできず、過干渉になります。

・兄は妻に強く言われているから、妹にも両親にも何もしてあげることができません。

家族の向いている方向が、バラバラですよね。

 

長女を妻に管理させ、口だけで自ら動こうとしない父親。

母親は気付かないうちに、長女へ過干渉になり、やがて共依存が深まります。

長男は妻の手前、両親も妹も助けることができません。

出所して31歳となった長女は、この状況下で前向きに「第二のスタート」を切ることができるでしょうか……?

環境が人をつくります

どれだけ前向きな人でも、環境の悪い場所に住んだり、自分に悪影響を与えるような人と一緒に居ると、段々堕落していきます。精神が病んでいきます。

仮に私がスラム街に住んだとしたら、簡単に薬物に手を出すだろうし、生活が荒れる自信があります。

これは古くから論じられてきた、「遺伝的要因が大きいのか」、「環境的要因が大きいのか」にも繋がります。これまでの研究では、遺伝で説明できるパーソナリティの要素は、せいぜい50%であると言われています。(Røysamb et ai., 2002)

今を見るより、第二のスタートを見据える

私はこのご家族に、長女としっかり向き合って欲しいと思います。

誰かに任せるようなことをせず、各々が長期的な目標を掲げて、長女をサポートする。これが再犯を犯さないために必要なことだと、私は考えます。

刑務所に行ったことを想像できる人は少ないと思いますので(笑)、自分が長期入院したと想像してみてください。

やっと退院できて家族に会える。ちょっと恥ずかしいような、懐かしいような。

そんな期待を胸に家に帰ってみたら、家族がバラバラになっている。いつも言い合いや喧嘩をしている。自分を避ける家族がいる。

「自分がここに居るからいけないんだ」、「自分のせいで家族が壊れた」、「やっとの思いで退院したのに…」と、ネガティブになると思うのです。

以前のブログでも書きましたが、ネガティブや怒り、不平不満は、物凄い勢いで伝染します。

出所直後や、依存症から脱却しつつあるときは、超不安なんです。もちろんそれはご家族も同じだと思います。この子は、この人は、社会でやって行けるだろうか?

私は出所後に、すごい不安に襲われました。このまま生活して行けるか、いつまた刑務所へ戻ることになるんじゃないか、受刑歴が誰かにバレるんじゃないか。

これは、多くの人が出所後に陥りがちな感覚です。私だけが感じるものではなく、長期間拘束されていれば、当たり前に感じる不安なのです。おどおどして、挙動不審になったり、とにかく先のことが不安になります。

そんな状態の自分が、夫婦喧嘩が絶えない家に戻ったら、精神的におかしくなってしまいます。

普通の人でもネガティブや怒りは伝染しやすいです。心が不安定な元受刑者や依存症者には、物凄い速さで伝染してしまいます。

一番悪いのは、間違いなく本人です。

ある家族のパターンで言えば、長女が薬物をやらなければ、家族が壊れるような事態は起こっていません。一番反省すべきは刑務所に行くことになった本人と、依存症者本人です。

自分のやったことを棚に上げて、家族を責めるのはお門違いです。

本人が真摯に反省し、本気で更生しようとする姿勢が見えたら、ご家族はそれに応えられる「環境」を作ってください。

受刑者、依存症者が安心して第二のスタートを切れるよう、第二のスタートを切った1年後、5年後、10年後を見据えて、家族かたち、絆をつくっていただきたいのです。

それには、まず夫婦仲の改善を。

子どものことに限らず、夫婦のコミュニケーションは十分でしょうか?

日ごろからしっかり話し合いをしていますか?

夫婦のコミュニケーションが取れていないのに、どうやって子どもとコミュニケーションを取るのでしょう。

夫婦や家族がコミュニケーションが取れている状態が、元受刑者や依存症者にとって良い環境であると、私は思います。

「お子さんを更生させたいと思うなら、まず夫婦仲を良くして下さい」、お子さんのことで相談にいらっしゃる方には、こうお伝えしています。

「子どものことで悩んでるのに、何で夫婦仲のことを言われなくちゃいけないの?そんなの関係ないでしょ!?」と思った方、結構いると思うんです。

関係なくないんです。

受刑者や依存症者が素直に気持ちを吐き出せる場を、“帰る場所”に用意してあげて欲しいと思います。

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

最近は多くの方からコメントをいただきます。碧の森のHPをご覧の皆さん、こちらの元記事のアメブロのコメント欄もぜひ参考になさってください。

PAGE TOP