前回のブログでは外の世界で回復を続けるのは難しいこと、春日部GAのオープンスピーカーミーティングに参加せていただいたと書きました。
今日のブログは現在受刑している人たちに向けて書きます。
私が高学歴で万引きをして捕まったと仮定します
実際の私は高卒、正社員で働いたのはほんの少し、長年水商売と風俗で働いてきました。
仮のお話として、私が一流企業でバリバリ働くキャリアウーマンだとします。
万引きをして店員に見つかります。警察、同居している両親に連絡が行き、ネットニュースにもなりました。会社からは退職勧奨を受け、辞表を提出します。
刑務所は行かずに済んだけれど、デジタルタトゥーは残り続けます。
これまで一生懸命頑張ってきたのに万引きで人生が台無し。世の人が羨む学歴も仕事も、一瞬で消えた。
それまで友人だと思っていた人は離れ孤独になります。これから出会うであろう人にも、退職理由が万引きだなんて絶対に言えない。
再就職をするにもネットに名前が載ったため、書類選考で落とされる。
名の通る会社ほどリファレンスチェックやバックグラウンドチェックは厳しい。
※リファレンスチェック→中途採用に応募してきた求職者の前職での勤務状況や人となりなどについて前職での関係者に確認を取る、中途採用選考時に行う応募者の身元照会のような調査
※バックグラウンドチェック→学歴・職歴・反社チェック・犯罪歴・民事訴訟歴・破産歴・インターネットでの発信やSNS調査
アルバイトや派遣社員で生活をします。自業自得、そう言い聞かせ毎日を過ごします。
時が経ちふとSNSを見ると、同級生は華々しい生活を送り、活躍しているように見える。年収は今の自分の何倍もありそうだ。
私、本当はそこに居たのに。居られたはずなのに。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
私は日々の生活を送りながら更生をしなくてはなりません。
余計な情報は山ほど入ってくる。自分の名前をググれば事件の概要は嫌でも目に入る。
同級生と同僚はもはや自分とは違う人種のように感じる。あれだけ仲が良かったのに、今は私との間にぶ厚く高い壁があるような気がする。
仕方がない、私はそれだけのことをした。
現実を直視できない
頭で理解はできても実際は現実をなかなか受け入れられないと思います。外の生活は雑音が入るからです。
日々の生活と更生を同時進行させるのは難しいかも知れません。
過去の自分と今の自分の擦り合わせができず、なかなか前に進めないのが外の世界、娑婆ではないでしょうか。
一流企業に勤める私で分かりやすく例えましたが、どんな仕事の人でも同じことが言えると思います。
犯罪行為をしている真っ最中と逮捕後は、天と地なんて言葉では言い表せないほどの差がありますよね。
差がありすぎるからこそ、外の世界で更生するのは難しいと感じます。
落ちるところまで落ちて、諦めがつく
私は刑務所へ行くことで自分を見つめ直すことができました。
入所したばかりのころは外の世界が気になって仕方がなかったです。
でも気にしたところで刑務所からは出られないので、腹を括れるようになります。
私は腹を括ったんじゃなくて、腹を括らざるを得ない状態に無理矢理持っていかれました。
これも分かりやすく例えます。弁護士資格を持つ人が覚せい剤取締法違反で逮捕されたとします。
執行猶予判決でも弁護士資格は剥奪されますが、外にいるとその現実をなかなか受け入れられないと思います。受け止めることはできても、受け入れられない。
同僚の弁護士は粛々と毎日を過ごし、当たり前に仕事ができている。じゃあ自分は……?
次の仕事はどうしよう、収入は下がる、どうやって生きればいい、何をして生きればいい、せっかく弁護士になったのに等々、頭の中がパンクすると思います。
ああ、自分はとうとうここまで来ちゃったと、悪あがきしたくてもできない状況になることが(受刑することが)、結果的に早い更生や回復に繋がると私は思います。
受刑をきっかけにしてください
出所してしばらくすると、祝日や集会にお菓子やジュースが出る嬉しさ、パン食の日のワクワクを忘れます。
毎日お風呂に入れる幸せ、用便の許可を取る必要がない自由な世界に戻れたことが当たり前になってしまいます。
私は疲れてお風呂に入らず寝てしまうことがありますが、そういう時は自分の軸や波、リズムみたいなものが狂っていると感じます。
毎日お風呂に入れるなんて天国じゃないですか?その天国を無視して寝る行為は、心か身体が悲鳴をあげている証拠です。
当たり前の幸せや小さな幸せを見つけられるようになったのも、服役したおかげです。
刑務所生活は「今まで自分はこうやって生きてきた!」という驕り(おごり)やプライドを捨てやすいし、手放しやすいと思います。
見栄を張ったり何かを自慢したくなる友人や同僚は、刑務所に居ません。
成育歴も学歴も職業も関係なく、どんな人にも経験、自論、認知があります。
その経験と自論と認知で失敗したから、私を含め皆さんは刑務所へ行くことになったと思います。
湯浅はそういうことに外の世界で気付けた?と聞かれたら、絶対に無理ですと答えます。
出所後の批判は覚悟をしてください
受刑者は出所後も様々な制約を受けます。
例えば家を借りられない、海外渡航ができない、取れない資格がある、就けない職業があるなど様々です。
私は今の活動を始めてから、心無い言葉を浴びせられることがあります。受刑者や元受刑者、前科者がよく言われることベスト5です。
・真面目に生きてきたやつが一番偉い
・過去の犯罪を武勇伝のように語るな
・どうせ再犯する
・犯罪者のくせに
・一生刑務所に入ってろ(出てくるな)
1番目はおっしゃる通りだと思います。
2番目に関して、私は元受刑者と受刑者、そのご家族に向けて「こんなどうしようもない私でも楽しく生きている、あなたも必ずやり直せる」と希望をお伝えしています。こういうことを言う人に向けて発信をしていません。
3、4、5番目はもはや定型文レベルで目に入ります。他にも色々なことを言われますが、いちいち気にしていられません。
あなたが社会復帰をしたら、あなたを罵る人が必ず出てきます。
そのときに肩で風を切って「自分は刑期を全うした、誰にも文句は言わせねぇ!」という態度では、残念ながら今の日本はあなたを受け入れてくれません。
どんな犯罪も必ず被害者が居ます。薬物で服役している方、自分は誰も傷つけてない、被害者は居ない!と思っていませんか?あなたのご家族が一番の被害者です。
必要以上にへりくだる必要はありませんが、謙虚な気持ちで社会に戻ってきて欲しいと思います。
贖罪については出所後も頭の片隅に置き、加害した事実を思い出すことも必要だと私は考えています。
今の皆さんの生活は国民の税金で賄われています。そのことも忘れてはいけません。
受刑をプラスに捉えてください!
罪名は関係なく、私がお付き合いをしている前向きな前科者の人たちは、現実と戦いながら毎日を生きています。
素直に現実を受け入れている人は、強いです。
今の皆さんは現実を受け入れやすい環境に居ます。
その環境に居るから出来ること、刑務所じゃないと出来ないことがあります。
真面目に生きようとすればするほど、出所後に難題が降りかかってきます。
社会復帰から何年経っても過去は影のようについてきます。
辛いことはたくさんあったけど受刑したおかげで今の自分がいる、と言える日が必ず来ます。
そのためにも、服役期間を決して無駄にしないでください。
皆さんの出所を待っています。
前向きな前科者と一緒に、更生を続けていきませんか?
※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ「依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりました」の内容を、加筆修正して再掲載したものです。
最近は多くの方からコメントをいただきます。碧の森のHPをご覧の皆さん、こちらの元記事のアメブロのコメント欄もぜひ参考になさってください。