Column

Aさんから学ぶこと

拘置所・刑務所

前回のブログでは留置場・拘置所・刑務所と一緒だったシングルマザーのAさんが、出所後に一緒に頑張ろうと固く誓い合ったにもかかわらず、また刑務所に戻ってしまったと書きました。

これからAさんの行動を振り返りながら、私自身の経験も含め、依存症者がどんな行動をするか書いていきます。

依存症者のご家族の参考になればと思います。そして現在依存症で苦しんでいる方は、こういう考え方になっていないか、ご自身を振り返ってみてください。

私は現在も回復を続け前向きに生活を送っていますが、なぜAさんはスリップしてしまったのでしょうか?

「環境」が悪かった、自分を見誤った、この二つに尽きると私は考えています。

Aさんは逮捕前は愛人生活を送り、水商売や風俗で稼いでいました。
昼間の仕事に就いてお金を稼ぐということが当たり前ではありませんでした。
出所後はその現実に向き合い、生活レベルを下げなくてはいけないことを自分でも分かっていました。

出所後のAさんは、新宿でテレフォンアポインターの派遣アルバイトを始めます。
私はAさんに勤務地は自宅から近いほうがいいし、高時給はそれだけ求められるものが多くて大変だから、そこそこの時給の仕事にしたほうがいいとアドバイスをしました。

ですが彼女は頑なに“新宿勤務”と“高時給”という条件にこだわりました。

出所後にインスタを見ると、仲の良かった子がクラブで楽しそうにしている、幸せそうにしている、いいな……羨ましい……。

自分が二度の懲役で無駄に過ごした時間を、なんとかして早く取り返したい、そんな思いがAさんにはありました。そして早くM君と一緒に暮らしたい。

ですがその気持ちは空回りします。依存症に焦りは禁物です。

もともと水商売や風俗で休みグセ、怠けグセがある人が、週6で往復80分の通勤を続けられるわけがないんです。

私はAさんのお父さんに何度かお会いしています。私の名前・住所・電話番号をお伝えし、実際にお父さんの目で私を見ていただき、Aさんが私と会うときに無用な心配をしないようにするためです。

私とお父さんがつながる前は、お父さんがいろいろうるさい!とかこんな酷いことを言うんだ!とか、自分の更生を父親が邪魔をすると訴えていたAさんですが、実際に私とお父さんが連絡を取るようになってから、Aさんの隠しごとや嘘がどんどん明るみになります。

依存症者の家族からすればまた嘘をついてるんじゃないか、薬物に手を出しているんじゃないか、そう疑って当然です。

だって何度も裏切られているんだから。何度も嘘をつかれているんだから。

お父さんは私に繰り返し言いました。「今度こそ更生してほしいんです……。Mの母親だという自覚を持ってほしいんです。今度は信じたいんです……」

特にAさんの場合、次再犯すればM君が里親に出されてしまいます。かわいい孫に二度と会えなくなるのです。そりゃ口うるさくもなります。

私はお父さんに、ご自身の育て方が間違っていたから、今のAさんになったことを忘れないでください、とはっきり言いました。
子どもの頃に金銭的な贅沢という間違った愛情を与え、あらゆることの尻拭いをお父さんがずっとしてきたことで、「誰かが何とかしてくれる」という甘い考えをAさんが持つようになったのです。

ですがそんな人生に甘えて、何も努力せず生きてきたのはAさんです。一番悪いのはAさん本人だけど、Aさんだけを責めるのは違いますよという話もしました。

お父さんはご高齢で足が悪く、病院とデイケアに通われていました。生活がままならなくなり、生活保護を受給することになります。
生活保護を受けながら働くのはとても難しいです。Aさんは自分が余分に稼いだ金額を国に返さなくてはいけないことに、理不尽を感じていました。

Aさんは生活保護を受けても自由に使えるお金を増やすため、テレアポの派遣バイトだけではなく水商売も始めます。水商売で得た金額はもちろん役所には申告しません。

もう皆さん想像がつくと思いますが……出所したばかりで昼職の経験がない人間に、仕事の両立など不可能です。
テレアポのバイトは朝起きれず、休むようになります。休むことでなおさら仕事に行きにくくなり、自然と水商売に重きを置くようになります。

水商売は見た目がどうしても派手になります。他のキャストがかわいいネイルや髪の色をしていれば、私もやりたい!となります。あの頃のAさんに、その欲望を抑える精神力は備わっていません。

AさんはM君をダシにして言い訳をするようになります。
Mを児相から引き取るためにお金が必要、水商売やるのは仕方ないじゃない!Mのために売れる必要がある、それにはネイルも髪もある程度のお金をかけなきゃダメなんだよ!

これでは本末転倒です。

私は言いました。「それってAちゃんが、自分が着飾るための言い訳にM君を使ってるよね?着飾らなくても別に水商売はできるよ?」

Aさんは本心を見透かされたことに、とても驚いた顔をしていました。
今まで厳しいことを友人にも親にも、誰にも言われたことがないのです。本心を誰にも悟られたことがないのです。

表面的にはとても人あたりの良い、素直な子だから。

私にはAさんの行動や言動が、手に取るように分かりました。どんな行動をするかも予想できました。

なぜなら、Aさんは私の若いころに、考え方も行動もそっくりだったからです。

Aさんから学ぶこと #2へ続きます。

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

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