前回のブログでは、内掃工場の受刑者と2畳半の居室で生活が始まったことを書きました。
改めて説明しますが、内掃工場は5~6人の少人数で、刑務所中の掃除や雑用をする工場です。
美容師の職業訓練や、刑務所の外の介護施設で作業をする受刑者がたまにお手伝いに来てくれることがあります。
どんな作業をするかがノートに書いてありました。これは2016年6月に書いたものです。
余談ですが、刑務所ではノートの使い方についても厳しい決まりがあり、行を空けてはいけません。見やすくするために本当は一行空けたいんですが、刑務官が検閲しやすいようにこういう決まりになっているのだと思います。
下の方には認知行動療法について書いてありますね。このころの私はかなり真面目に依存症のことを調べたり、勉強をしていました。
曜日によって掃除の内容や場所が違いますが、この中で一番きつかった作業は“蜘蛛の巣”です。
栃木刑務所はとても広く、居室から工場、食堂、医務を行き来する通路があります。通路には雨除けがあり、受刑者は濡れることなく居室から工場まで歩いていくことができます。
通路の上には電気の配線がびっしりと張り巡らされているのですが、そこに蜘蛛が巣を作ります。
刑務所中にある蜘蛛の巣を、ゴーグルを着けて長い箒で取っていくのですが、ずっと上を向きっぱなしの作業なので首が痛くなります。
頑張って取り去っても次の日にはまた巣が出来るので、作業の達成感はほとんどありません。
みなさん小さい蜘蛛を想像しているかもしれませんが、これが結構大きくて気持ち悪いんです。
私が栃木刑務所で見た最大の蜘蛛は拳大くらい。繁殖すると刑務所中が蜘蛛だらけになるので、見つけたらその場で殺さなくてはいけません。あれは本当に嫌でした。
刑務所の中の色んなところで鳩が糞をしていきますが、その糞を掃除したり、刑務所中の窓という窓を拭くのも内掃です。
午後には必ず残飯処理があります。
炊場が料理を作る工場の隣に残飯小屋があり、食材が入っていた段ボールや袋、刑務所中の残った残飯が全てこの小屋の中に捨てられます。その残飯が入った大きなゴミ袋を、刑務所の一番端にあるコンテナにリヤカーで捨てに行きます。
これもかなりきつい作業で、残飯が超重たいのはもちろん、袋が破れて中の液体が体にや顔にかかることがあります。夏場の残飯はとても臭く、それが破れていたりするときは、適切に処理してくれなかった衛生係に怒りが向くほどでした。
ノートを見て分かるように、本当に色々なところへ行ったり入ることができました。
その中でも、自分が刑務所の中に居るという現実を突きつけられた場所があります。
それは“塀のすぐそば”です。
刈払い機を使い刑務所の中の草刈りをやるというのは、以前のブログに書かせていただきましたが、そのときに塀のすぐそばまで行くことができます。
テレビなどで刑務所や拘置所の外観が映るときがありますが、それを見て「意外と塀が低いな」と思ったことはありませんか?
実は外より低い所に刑務所は建っているのです。窪地に建っているイメージですね。
なので中から塀を見ると、本当に物凄く高いのです……。外から見るのとは雲泥の違いです。
刑務所の中からあの壁を見て、飛び越えられると思う人は絶対に居ないでしょう。
あの塀を目の当たりにしたとき、本当に世間から隔絶された場所に居るんだということを実感しました。
刑務所の中にはたくさんの植物が植えてありますが、内掃が種を植えたりお水を上げたり、花が咲くように一生懸命お世話をします。
私が立川拘置所から移送され栃木刑務に入所した日、中庭に黄色いバラが咲いていたのをとても良く覚えています。「あのバラに触ることはできないけど、刑務所の中でもこうして花を愛でることはできるんだ。」
これから刑務所で受刑生活を送る、それは決して明るい気持ちになるものではありません。これから先の受刑生活がとても不安……。
暗い気持ちで栃木に来たわけですが、その黄色いバラを見て心が少し明るくなったのです。
そして私は運よく、そのバラや植物のお世話ができる内掃工場に配役されました。
次回のブログでは、私が実際に刑務所で実践して気付いた“土に触れることの大切さ”を書いていこうと思います。
※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ「依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりました」の内容を、加筆修正して再掲載したものです。
