Column

受刑者の高齢化と矯正教育の限界

受刑者の家族

前回のブログでは、私の信条について書きました。

今年の1月から刑務所のことをあまり書いていなかったので、今日は栃木刑務所での生活に話を戻します。

超高齢化社会の日本ですが、もちろん刑務所の中でも同じことが起きています。
足腰が悪く、自立歩行が困難な受刑者には、手押し車が貸与されます。こんなにカラフルではなく真っ黒ですが、写真のような感じです。

私は刑務所の中を歩き回る作業に就いていたので、自分の工場以外の受刑者をたくさん見ることができました。受刑者だけではなく、来賓の方を見ることもありました。

実際にはじーっと見ることはできません。受刑者が通り過ぎるときは、壁側を向いて目を合わせないようにするからです。正確には刑務官に壁側を向けと指示されます。

通路掃除をしている時に面会に行く受刑者、医務へ行く受刑者、保護房へ連行される受刑者を見ることができます。

そんな中でも私の印象に残っている高齢受刑者が3人います。

1人は前のブログにも書いたことがありますが、刑務官に「お久しぶりです!」と言えてしまう受刑者です。
これは単純に、刑務官にお久しぶりです!と言える感覚を持っていることに驚きました。栃木刑務所へ入所して4日しか経っていなかったので、本当に衝撃だったんですよね。

2人目は保護房へ連行される受刑者です。
もしかしたら高齢者ではないかも知れません。というのも複数の刑務官にお神輿状態で連行されるので、間違いなく高齢者だったかと聞かれると自信がありません。しゃがれた大声で叫んでいました。「あたしはぜってぇにシャブやめねぇからなぁ!!!」と。

これにはもはや狂気を感じたというか……、受刑者が連行された後も黙々と作業をするわけですが、この日は1日嫌な気分だったのをとても良く覚えています。

3人目は医務へ頻繁に行く受刑者です。
この受刑者は医務までの100mほどの通路をものすごい時間をかけて往復していました。
足が悪いのでしょう、歩幅が5㎝程度でちょこちょこ歩く感じです。もちろん刑務官が横に付き添いますが、手を貸すことはできません。刑務官も同じようにゆっくり歩いて医務へ連れて行くのですが、行きと帰りで何十分もかかっていたと思います。

歳をとってからこんな所に来るもんじゃない。素直にそう思いました。

高齢者になってから刑務所へ行くのは、肉体的に相当厳しいものがあると思います。運動する時間は限られているし、外と同じ医療を受けるなんて絶対に不可能です。

介助が必要な受刑者は、若くて体力のある受刑者がお世話をします。外部から来ている介護士も2人は居たと思いますが、それでは到底足りません。

矯正施設というプライバシーが守られている場所だからこその難しさだと思いますが、民間に委託したくてもできない現状があるのかなと思います。

受刑者の情報が外に流れるのを防ぐ=守るということです。

刑務所は受刑者を守る場所でもある、それを教えてくれたのは立川拘置所の工場の先生です。

「あなたたちはここに居ることで世間から守られている。外で待つ家族はあなたが刑務所に来たことでどんな被害を被っていると思う?それを受刑中に考えないといけないよね」

前にも書いたことがありますが、私は刑務官にもとても恵まれていました。本来刑務官は受刑者にこのような話はあまりしないと思います。
(私の受刑中と現在では制度が変わっている可能性がありますが)

立川拘置所の工場の先生は報奨金の確認のときに「なにかある?」と聞いてくれるような方だったのと、私が疑問を積極的に聞くタイプだったので答えてくれたのもあると思います。

“刑務所は受刑者を守る場所でもある”

このことに気付かせてくれた立川拘置所の先生には感謝していますし、あの言葉は一生忘れることはないでしょう。

刑務所が受刑者のことを守り続ける限り、中のことは全て法務省側の人間がやらなくてはいけません。

栃木刑務所で手押し車を押しながらぞろぞろ歩く高齢受刑者の集団を見て、それも限界に近付いていると感じます。刑務官の仕事は介護ではありません。

殺人を犯した受刑者も、窃盗で服役した私もこれといった教育がされていないという現実。
薬物だけは「あなたは依存症です」と教えてくれますが、それも焼け石に水のように思います。

教育も高齢者問題も何も改善されないまま、“ただ受刑期間を過ごさせる場所”になるようなことはあってはならないと私は考えています。

更生するかしないか、依存症が回復するかどうかはあくまでも本人の頑張り次第ですが、その分かりやすいヒントのようなものを、刑務所側から積極的に与えてもいいのではないかと、元受刑者の私は思います。

ただし更生の大前提として、それを自らが問題提起し、改善しよう、努力しようと思えないようでは、また刑務所へ戻ることになってしまうのは言うまでもありません。

刑務所側や家族がヒントをくれてたとしても、考えて行動するのは本人ですから。

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

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