Column

己を理解する

受刑者の家族

前回のブログでは依存症者を支える「物」と「者」について、家族に依存症者がいることを世間に知られたくないという思いから、家族内で解決しようとすればするほど、依存症は悪化すると書きました。

アメブロでコメントをいただきましたので抜粋します。

・自分が選んだ配偶者がアル中であるという恥があったというご意見。
・祖父母と母は父の依存を恥と捉えていたように思うというご意見。
・共依存に陥りまともな思考が出来なかった、保身とか高度な考えはなかったというご意見。
・彼に尽くし、彼を依存させ「者」になってしまっていた事に気がついたというご意見。

皆さんからいただいたコメントは、これから依存症と闘うご家族の参考になると思います。

特に、「共依存に陥りまともな思考ができなかった」というご意見について、毎日のように暴力を受け暴言を吐かれると自分が悪い、自分のせいだと思い込まされてしまいます。マインドコントロール状態です。

最近では女性が男性に暴力を振るうケースも多く見受けられます。女性だから暴力行為に及ばないであろうというジェンダー論は過去のもので、DV被害を訴える男性が増えていますね。

自分が悪いから……という思い込みが問題を外に出させません。ですので積極的に“家族外”とコミュニケーションを取ることは本当に大切です。

コロナ過で依存症の人がどんどん増えていくということ、人との物理的な接触が減っても、自ら孤独になるようなことはしないでいただきたいと、以前のブログに書きました。

心や想いだけは人と距離を置かず、積極的に密にしていくことを依存症子は心掛けています。

 

過去の行いは消せない

先日Twitterでも呟きましたが、引っ越しに伴いマンションの両隣のお宅に手土産を持ってご挨拶に行きました。

一軒は私の依存行動が激しいころから住まれている30代半ばのご夫婦、小学校低学年の息子さんがいる3人家族です。
もう一軒は私の出所後に引越してきた30代前半のご夫婦、小学校低学年の息子さんに幼稚園年長の娘さんがいる4人家族です。

私自身向精神薬の飲み過ぎで記憶がありませんが、3人家族の奥様は私の家に警察が来ていたことや連行される姿、私の奇行や母と大喧嘩する様子などを見聞きしていたと思われます。
私にうっすらと残っている記憶は、留置場を出たり入ったりしているとき、この息子さんはまだ赤ちゃんだったということです。

GW最終日、夕食の準備に被らないよう時間を考えインターホンを押します。
夫が「隣の依存です、少しお時間よろしいでしょうか」と言いますが「何のご用でしょうか」とすぐには玄関ドアを開けようとしてくれません。「○日に引越しをすることになったのでご挨拶に伺ったのですが」と言ってようやくドアを開けてくれました。

引越しする旨と前々日あたりから段ボール搬入、当日は朝から騒音などご迷惑をおかけします、今までお世話になりましたとお伝えし手土産をお渡しします。奥様が超塩対応で早く帰ってほしいオーラ全開なのを私は敏感に察します。

もう一軒のご家族はとてもにこやかに対応してくれます。出所後の私しか知らないご夫婦は「どちらに越されるんですか?寂しくなりますね、うちの子達がうるさかったからかと思いました(笑)」など、冗談を交えながらお話します。

家に戻って再認識します。この対応の差が現実なのだと。
この出来事を今後も忘れてはいけない。そう胸に刻みます。

 


自分の弱点を知る意味

依存症の人は自分が何かにつまづいたとき依存行動に走ります。そのつまづきが何だったのかを知ることがとても重要です。例えを簡単に書き出します。

・仕事のストレスから飲み始めましたか?
・友人の勧めで違法薬物やギャンブルを始めましたか?
・対人関係が上手くいかないから窃盗を始めましたか?
・孤独だから自傷行為や過食を始めましたか?
・誰にも理解されないから買い物でうっぷんを晴らしましたか?

まずは“自分がなぜ依存行動に走ったのか”を知ることが必要です。
依存症子は断言しますが、これを理解していない依存症者は必ずスリップしますし絶対に回復しません。

仮に上記のようなことが起こったとき、私だったらどうするか書き出していきます。

・仕事のストレスで飲み始めたなら、そのストレスの原因を潰します。
・自分に悪影響を及ぼしたり、犯罪行為を勧めるような友人とまず縁を切ります。
・対人関係が悪くなった理由を見つけます。
・なぜ孤独になったのか考え、そうならないような工夫と努力をします。
・理解されないではなく、「理解されたい」と願う理由を考えます。

簡単に言ってくれるけどできるわけないじゃん!と思う方がいらっしゃるでしょう。これは依存症とは関係のない人でもやっておいて損はない作業だと思います。

自分の弱い部分を知り、理解することも依存症の回復手段の一つです。

どんなときに依存行動をしようと思うのか、それに気付かなくては防ぎようがありません。

 

自分の弱さを知る人は強い

先日ある依存症の方と、zoomでお話をする機会がありました。
私からコンタクトを取り、通話をする時間を作っていただきました。依存症子の活動を始めた1年前からこの方を知っていますが、直接お話をするのは今回が初めてです。

色々話を始めたら止まりません。知識量の多さと熱量がこちらにバンバン伝わってきます。
お互いに盛り上がって通話時間は2時間半にもなり、その方のお話の中で私が大爆笑してしまったフレーズがあります。

言葉は悪いけど、依存症者は精神異常者ですから

これはご自身が自分の弱さを分かっているから言える言葉です。この方も私も自分を理解しているから、たとえ誰に精神異常者と言われても怒ることはないでしょう。だってその通りですから。

この方は自分の弱さを十分に知っているから、理解しているから精力的に活動できているのだと思います。だから学ぶことや挑戦することを止めない。

自虐でも何でもなく、自分を精神異常者だと認める潔さ。

自分の弱点を知る人は、とても強いと私は思います。

 

過去を振り返る勇気

冒頭に書いたコメントをくださった皆さんは、自分を客観視することができていると思います。
文字に起こせるということは、しっかり過去を振り返ることができている何よりの証拠です。そして過去を振り返ることが、前に進む力になります。

依存症者もそのご家族も、過去を振り返るなんて依存症と何の関係があるんだ!回復に全く結びつかない!と思うかも知れません。

依存症者もそのご家族も、自分を客観視できるようにならないと、同じことを繰り返してしまうと思います。過去の私がそうだったように。

通話した依存症の方も仰っていましたが、臭いものにフタをしたって意味が無いんですよね。どうしてこうなったかを突き詰めないとまた同じことが起こります。

引越しの挨拶で手土産を持って行って塩対応されても、過去の私の行いがそうさせてしまったという現実から逃げてはいけません。私はこの現実と一生向き合いながら生きて行くのです。

これも何度も書いていますが、誰だって自分の醜いところなんか見たくないんです。弱い部分なんで知りたくもないし、やっちまったことを振り返るのは超苦しいんです。

その苦しい作業を乗り越えてきたのが、冒頭のコメントをくださった方々や、2時間半も熱い議論を交わした依存症者の方だと私は思います。

 

引越しの準備で忙しくなりますので、来週14日のブログはお休みさせていただき、次回は21日に更新予定です。

産業カウンセラー養成講座が5月9日から始まりますので、そのご報告も21日にできればと思います。

ブログの更新はなくても相談は随時受けておりますので、アメブロのコメント、メッセージまたはTwitterのDMよりお知らせください。

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

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