Column

進藤さんがいたから、依存症子は存在する

拘置所・刑務所

前回のブログでは頂いたコメントの抜粋と、自分を理解している人は強いと書きました。

まずブログを休んでいた間の報告をさせてください。

引越し後の住民票や免許証の住所変更が、やっと一段落しました。
少しずつ家の片付けをしていますが、これがなかなか片付きません。以前住んでいたマンションは夫と母と住んでいたのでそこそこの広さがありましたが、今のマンションはその半分ほどの広さしかありません。それに対して物量が多く、徐々に断捨離しないと段ボールが減らないので、しばらく家の片付けが続きます。

産業カウンセラー養成講座の受講も5月9日から開始しています。
朝9時~17時までと結構な拘束時間ですが、内容が盛りだくさんであっという間に初日が終わり、とても楽しく講座を受けることができました。
こんなに長い時間何かを習うなんて今までに無い経験なので、(高校も遅刻や早退ばかりでまともに通っていないので)とても新鮮な感じです。

家の片付けをしながら産業カウンセラー養成講座に通い、e-Learningで動画視聴をして振り返りをまとめ、ホームページ作成の準備をします。

こんなにたくさんのことを一度にやるのは、私にとってハードルが高いです。なにせ今までやったことがないですから(笑)。ですので無理はせずに適度に進めていければと思います。

 

立川拘置所で「そんなことは分かってんだよ!!」と大声で叫びたかったこと

今日は立川拘置所での生活に話を戻します。
昨年6月のブログにも書きましたが、矯正指導日にお笑い芸人のビートきよしさん、タレントの小松政夫さんの講話がありました。講話と言っても予め録音されていたものが放送で流れるというものです。(矯正指導日とは作業をせずに勉強をする日です)
そのブログは元受刑者の言葉の力です。

話の内容はお二人とも似ており、「若い頃は努力をした」、「苦労したから今がある」、「諦めないで続けることに意味がある」というごく当たり前の一般論をお話されていました。

講話を聞いたあの頃の依存症子がどう思ったか、正直な気持ちを書きます。

『努力が大事ってそんなことは分かってんの!それができないから私たち受刑者はここに居んの!どうしたら努力や我慢ができるか、具体的に教えてくんない?刑務所に来たことない成功者に一般論を言われたって説得力ゼロ、それができたら苦労しねぇし、ここには来てねぇんだよ!!!』

言葉遣いが悪くてすみません。あの時は本気でこう叫びたかったんです。

講話を聞いたあとに感想文を提出しますが、表面上「これから努力ができるように頑張ります」みたいなことを書きました。

ビートきよしさんと小松政夫さんには大変申し訳ありませんが、お二人の講話はあの頃の私には全く刺さらず、「はいはい、芸能人が刑務所を慰問して自分の株をあげるやつね」と思っていました。上のブログにも書いていますが、これから就職したり新生活を始める若い方には、お二人の話は参考になるかも知れません。

刑務所という底辺に来てしまった私には、全く何も響かなかったのです。

 

元受刑者で元ヤクザ、今は牧師!?

とある矯正指導日です。どうせまた芸能人とか成功者の講話でしょ?今度はどんなふうに取り繕って感想文を書こうか、と思っていました。そこで流れてきた放送は耳を疑うものでした。

「今日は元受刑者で元ヤクザ、今は牧師をされている進藤龍也さんにお話を聞かせていただきます。」

マジ!?元受刑者で元ヤクザでも、法務省の講話に出れんの!?しかも累犯、何度も刑務所に来るとそれに慣れちゃって懲役太郎まっしぐらなのに、この人はどうやって更生したの?

こんな感情を持ちながら、興味津々に話を聞きました。まさか元受刑者が矯正指導日の講話に出てくるなんて、思ってもみなかったのです。

進藤さんは受刑歴が3回。元受刑者なら、収監されている私たちの気持ちが痛いほど分かるはず。
経験者ならではのアドバイスがあるだろうから、真剣に話を聞いてみよう。そう思った私は進藤さんの講話の内容を必死にノートに取りました。超真剣に話を聞きました。

その中でも印象に残っているのは、「昔苦労しなかったから今している」、「自分は辛抱しない人だった」、「当たり前のことは訓練しているからできる」というお話です。

講話を聞いていて、進藤さんの生い立ちも決して良いとは言えないこと、私と同じで我慢などとは無縁の生活を送っていたこと、ダメな部分の共通点をたくさん見つけます。

ダメな部分の共通点が見つかっても、今の進藤さんはそれを克服しているから、こうして法務省で講話ができている。

そのことに私は大きな希望を持ちました。進藤さんは3回刑務所に来てもやり直すことができている。もしかしたら私も更生することができるんじゃないか?そう思ったのです。

 


元受刑者、元薬物依存症者の言葉の力

以前のブログにも書きましたが、刑務所や拘置所は、所長によって教育方針が違うという話を聞いたことがあります。
私が収監された立川拘置所は、積極的に外部から講師を招き、熱心に教育をする施設だったと思います。

仮に私が他の拘置所に移送されていたら?いきなり栃木刑務所に移送されていたら?進藤さんの講話を聞くことはなかったでしょう。

出所してからなおさら強く感じるのです。あのとき進藤さんの講話を聞いていなかったら、今の私は存在しないだろうなと。

進藤さんの講和を聞いていなかったらどうなっていたか想像します。
・何も考えにずただ時間が過ぎるのを待って出所して、何も考えていないからまた同じことを繰り返す
・自分が刑務所に来ることになった本当の原因を見つけられない
・依存症になってしまった要因を見つけることもできない
・いつまでたっても親が悪い、周りが悪いと責任転嫁し続ける
・自分の人生を振り返ってみようなんて発想にならなかった

進藤さんの講話を聞いたことで、依存症子という一人の人間が救われました。

そのおかげで出所から4年半が経過した今も、刑務所に戻ることなく、前向きに人生を過ごすことができています。

私も進藤さんのように、元受刑者の勇気になりたい。希望を与えるような存在になりたい。
そう思って今の活動を始めました。

私が進藤さんの話を真剣に聞くことができたのは、彼が私と同じ受刑者で、薬物依存症者だったからです。私のように進藤さんに影響された受刑者はたくさんいるはずです。

私も進藤さんのようになりたい。
アプローチの方法は違うけれど、私は私のやり方で受刑者、元受刑者、依存症者、そのご家族の力になることができればと思っています。

今日は改めて、私の活動の原点である進藤龍也さんのこと、私が立川拘置所でやさぐれていたときのお話をさせていただきました。

進藤さんは現在も精力的に活動をされています。アメブロのプロフィールページを貼りますので、ご興味のある方はぜひ見てみてください。

https://profile.ameba.jp/ameba/1st-geocities-churchl/

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

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