Column

水戸刑務所からの手紙

コラム

前回のブログは待ち人さんからいただいたメッセージを元に、私が考える「前科者を支えること」について書きました。

3月15日のブログはお休みさせていただきますが、YouTubeの動画upや告知はさせていただきます。

 

受刑者との文通

 

碧の森の活動の一環として受刑者と文通をしています。相談者さんのご家族やパートナーと文通をすることがほとんどです。

湯浅と受刑者が文通をするメリットはいくつかありますが、まず受刑者の思いや考えに「元受刑者として」客観的な意見を伝えられるということです。

私が普段からお伝えしている「受刑者の気持ちは受刑者が一番良く分かる」、この部分で腹を割った対話ができ、相談者さんが伝えにくい内容も、第三者の私だから伝えられる場合があります。

内容は文通相手の状況によって変えます。

収監直後は不安が多いので、出所を待っている・懲罰を受けることなく真面目に務めてほしいといった内容を書きます。

収監中版は気が抜けて周囲に不平不満を持つ時期なので、気を抜かず、なぜ刑務所に来たかをしっかり考えてもらうよう促します。

収監終盤では出所はゴールではなくスタートであること、社会復帰後のリアルな弊害について伝えます。

これまで文通をしてきた中で度肝を抜かれる内容が書かれていたのは1人。

守秘義務があるので内容は書きませんが、出所後再犯せずとも今後の人生苦労するだろうなという内容です。

大学に通い始めてからなかなか時間が取れないので、だいたい1~2ヶ月に1回まとめて手紙を書くようにしています。

 

水戸刑務所クリスマス会

 

私は2023年12月22日に水戸刑務所のクリスマス会で講話をすることができましたが、その時の様子はYouTubeとブログでご報告させていただいております。

 

 

水戸刑務所の100人近い受刑者の方が講話を聞いてくれました。

 

講話を聞いた受刑者からの手紙

 

私の講話を聞いた受刑者から碧の森に手紙が届きました。

美しい字で便箋7枚に質問や思いがびっしりと書かれています。

 

↑とても綺麗な字ですよね。

懲役年数が長い人は字が綺麗なことが多いですが、理由はペン習字に取り組んだり写経をする人が多いからです。(余暇時間にやる事が無いため)

私は受刑中、夫が使っていたペン習字のテキストを差入れしてもらいました。おかげで今は受刑前より字が綺麗になりました。因みに進藤さんも字が綺麗です。(笑)

 

手紙の冒頭にはクリスマス会で私を知り、(どなたかに)碧の森のHPを印刷して送ってもらったとありました。

クリスマス会のたった5分の講話。私にとっては貴重な5分です。

住所を調べて手紙を送ってくれる人がいるなんて全く予想していませんでした。本当に嬉しかったです。

今日は手紙を読んで私が感じたことを、読者の皆さんと共有したいと思います。

 

服役していた時間を何としても取り戻してやる!

 

今ブログを読んでくださっている元受刑者の方、この気持ちは良く分かると思います。

 

依存症者の方、依存に耽溺していた「時間」や「お金」、あるいは「健康」や「人間関係」を何とかして取り戻したい、そう思ったことはありませんか?

犯罪や依存とは一切無縁の方はどうでしょう?

例えばですが大学を浪人した方、就職活動中の方、婚活中の方、子どもがなかなか授からない方、社会生活を送る中で焦りを感じることは多々あると思います。

受刑者は特に焦りを強く感じるものです。なぜなら外の世界をリアルに見ることができないから。

時間は刻々と流れ、自分が社会から置いてきぼりにされたように感じる。

置いてきぼりにされてたまるか!自分はもう二度とここには戻らない、さっさと働いて稼いで、受刑していた無駄な時間を何としても取り戻してやる!

 

焦りは良い結果を生まない

 

これまでの経験から、焦っても絶対に良い結果は出ません。

絶対と言い切れるの?というお言葉をいただきそうですが、元受刑者と依存症者に限り絶対と言い切れます。

着実に一歩ずつ進むことが大切ですが、この作業が元受刑者や依存症者は苦手だと思います。私を含めて。

 

手紙をくださった受刑者は出所が近いので、内容は終始明るいです。

お金に対する拘りが強く、昔のように稼ぐ!そのためにこういうプランを練っている!海外進出もしたい!といったニュアンスの内容が書かれていました。

懲役の年数が長ければ長いほど焦り、(色々なものを)一気に取り戻して社会復帰してやる!と思ってしまうんですよね。

 

お金より何より、信頼を取り戻す努力を

 

取り戻したい思うものはたくさんありますが、私が一番重要だと思うものは「信頼」です。

信頼が無ければ仕事もできませんし、人間関係も円滑にいかず、お金も稼げません。

信頼があれば自然と仕事を頼まれ、人との付き合いも円滑になり、それに伴いお金も後からついてきます。

 

受刑者や依存症者は人からの信頼が地の底まで落ちています。当然ですね。

嘘をついたり約束を破ったり、人を人とも思わないような対応をされれば「もうこの人とは付き合えない」となりますから。

信頼を一気に取り戻すことはできません。新たにコツコツ積み重ねるしかない。

約束や時間を守る。
安請け合いをしない。
出来ないことは正直に言う。
自分を誤魔化さない。
相手の立場を慮る。

↑信頼を取り戻すのに必要なことだと思います。

信頼は目に見えません。私は目に見えないことほど大切なものは無いと思っています。

目に見えないものほど軽視しがちだし忘れてしまうものです。恩や義理もそうですね。

目に見えないものほど元に戻すのが難しいですし、元に戻らない可能性の方が高いです。

 

私は人生を歩む中で色々な人からの信頼を失い、受刑しました。

出所して経験と体験を重ね、今は「湯浅さんに任せれば大丈夫」、「湯浅さんに任せていいですか」と言ってもらえることも増えました。

無理なものは無理とお答えし、出来ないことも正直に言う。決して安請け合いはしない。

 

社会復帰後の人生まだまだ模索中ですが、人の意見に耳を傾け、苦言を受け止め、これからも試行錯誤しながら人生を歩んで行ければと思います。

今日のブログは、水戸刑務所からの手紙を読んで思ったことを書きました。この方の出所を楽しみに待とうと思います。

 

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

最近は多くの方からコメントをいただきます。碧の森のHPをご覧の皆さん、こちらの元記事のアメブロのコメント欄もぜひ参考になさってください。

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