前回のブログでは釈放前指導がどんなものか書きました。
刑務所とは無縁の方は刑務所でどんな指導が行われているか、教育があるのか全く分からないと思いますので、私が収監されていたころの経験を今後もお伝えしていきます。
お伝えする理由は、刑務所の内情を知らないと、批判することも改善することも出来ないと考えるからです。
無知が偏見や差別を生む
まず知っていただくことがとても大切です。
知識を持った上で建設的な意見を出し、改善できるように各々ができることをやればいい。
夫が釈放前指導のブログを読んで、「へぇ~、全然知らなかった。2週間じゃ何もできないよね」と言いましたが、元受刑者の家族でさえ釈放前指導のことをほとんど知らないのです。
私が活動を続ける中でやっと依存症・発達障害・境界知能・矯正教育・刑務所・前科者に興味を持つようになりましたが、それでも関心は薄いです。
関心が薄い理由は、自分に直接関係が無いからだと思います。
社会生活で元受刑者と接する機会が無い
私は元受刑者ですが、夫婦生活を送る中で今のところ弊害はありません。
夫の会社に元受刑者も前科者も一人も居ないので、社会生活を送る中で元受刑者や前科者から迷惑を被ることも、困ることもありません。
仕事以外の部分では元受刑者と接していると思います。
例えば飲食店の店員さんや職人さんなど、接客業をされている元受刑者や前科者と一瞬交わることはあっても、一緒に仕事をしたり長時間過ごすといった経験は無いわけです。
私のことでは大いに迷惑を被り困った夫ですが、社会復帰した受刑者や前科者を実際に見たことが無いし困らされた経験がないので、私の考えていることを伝えてもリアリティが無いのだと思います。
「ふ~ん、そういうものなんだ」といった感じ。かと言って調べようと思うほどの関心は持てない。
きっと日本国民は、夫のような人がほとんどなのだと思います。
見えないと知りようが無い
夫を例に出しましたが、見えないから身近に前科者がいるとは想像しませんし、知ろうとも思いません。
なごみちゃんのエピソードも面白いので書いていきます。
進藤さんと湯浅で対談動画を撮影する予定になっているのですが、これまで依存とも前科とも全く関係のないなごみちゃんに、「なごみちゃんから進藤さんに質問があったら教えてほしい」と伝えました。なごみちゃんは湯浅のYouTube編集者です
私の中でヤクザは身近で、夜職で愛人生活を送っていたからある程度のことを知っています。
なごみちゃんの質問の目の付け所がとても面白かったのです。
・ヤクザにはどうやって入るんですか?
ヤクザに就職するにはどうすればいい?面接とかあるの?
・ヤクザはお給料がどこから出るんですか?
毎月固定給が入るのか?どんな仕事をするのか?労働時間は何時間か?
視点が面白くないですか?私も改めて聞いてみたいと思うような事柄です。
なごみちゃんも知らないうちにヤクザとすれ違ったことはあるでしょうが、実際のヤクザと交流を持ったことはありません。
一般人に紛れてヤクザは間違いなく存在しているけれど、見えない。見えないのだから知りようが無いですよね。
ヤクザを知らないなごみちゃんだからこそ、このような面白い視点の質問が出てくるのだと思います。
想像をしてください
あなたが絶対に犯罪者にならないと言い切ることは出来ないと思います。認知症の高齢者が急に飛び出し車で轢いてしまうかも知れません。
あなたが絶対に被害者にならないと言い切ることも出来ないと思います。いつ詐欺・強盗・窃盗被害・通り魔に遭うか分かりません。
あなたではなく大切な人や友人、家族や職場の人が犯罪者や被害者になる可能性も0ではありません。
前回のブログでも書きましたが、受刑者はいつか必ず社会復帰します。
犯罪を犯したことのない方も、被害者の方も前科者も、共生をしていくのです。
私は道を踏み外したものを一発アウトで排斥せず、共に生きる道を探していきたいのです。
長い道のりです。加害者と被害者が理解し合うことは難しいかも知れない。
それでも相手を慮ったり寄り添うことはできます。その努力はまず前科者からする必要があります。
三重刑務所からの手紙
タイトルの回収をしていきます。
私は三重刑務所に受刑中の子と文通をしています。久しぶりの手紙でしたが、どうやら懲罰を受けていたようです。
懲罰のせいで今はお菓子が食べられない4類に下がりましたが、3類に上がれるように頑張りますと書かれていました。
刑務所では3類と言う身分になるとお菓子を月1回購入できます。
好きなお菓子ではなく刑務所が準備するお菓子を買えるのですが、私はアルフォート・ココナッツサブレ・ファンタ・カルピスウォーターを食べたり飲んだりしました。(他にも色々ありますが今思い出せるのはこのくらい)
さて、この一文を読んで皆さんは何を思いますか?
受刑者を「さん」づけで呼んだり、行進を無くすことが果たして受刑者の社会復帰の役に立つでしょうか?
「さん」づけになった経緯は上記の記事ですが、そんなことよりも他にやる事があると私は思うのです。
それが教育です。
社会復帰後の弊害を伝えることはもちろん、元受刑者で立派に社会復帰している人の話を聞かせたり、規則正しい生活を送ることの大切さ、納税、健康保険、年金の仕組み、生活保護の申請と受給方法etc.
書き始めたら止まらないのでここで止めておきますが、私はこれからも刑務所で実施した方がいい事や教育について、皆さんに伝え続けます。
見えないフリをせず、臭いものに蓋をせず、閉鎖的な空間である刑務所の内情を知っていただき、皆で共に生きる道を本気で考えたいのです。
私のブログの読者さんのご意見をぜひ伺いたいです。コメントをどしどしお待ちしております。
※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ「依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりました」の内容を、加筆修正して再掲載したものです。
最近は多くの方からコメントをいただきます。碧の森のHPをご覧の皆さん、こちらの元記事のアメブロのコメント欄もぜひ参考になさってください。