Column

依存症子の“覚悟”

共依存(イネイブラー)

前回のブログではLGBTQやXジェンダーについての簡単な説明と、マイノリティは決して弱者ではないこと、依存症者は家族や身近な人に、対等に向き合って欲しいという思いがあることを書きました。

コメントをいくつかいただきました。その中でも「少数派のお話を聞き理解に努めることでとても得をしている」というご意見があり、なるほどなと思いました。
多数派の意見と少数派の意見両方に耳を傾けて、初めて見えてくるものもあると思います。どんな精神状態や状況下でも、その姿勢を持ち続けられるようにしたいなと、コメントを見て改めて思いました。

 

勇気を出して自分の過去を話したら、涙が出そうになった

今日は6月20日の産業カウンセラー養成講座であったことを書かせてください。
産業カウンセラー養成講座では毎回課題が出ます。宿題みたいなものですね。前回の課題は「自分の知っている自分(自己理解)」という作文でした。

私は正直に自分が依存症当事者で元受刑者であること、アメブロに今までの経験を綴っていること、依存症者や受刑者、そのご家族の相談に乗っていること、その勉強のために産業カウンセラー養成講座に通っていることを書きました。

講師の方しか読まないと思っていたので正直に書いたのですが、授業の中で「発表できる人はしてください」とのこと。えっ……、皆さんの前で読み上げるの!?

始めはなかなか手を挙げる人は居ませんでしたが、徐々に発言する人が増えてきます。発表した内容をフィードバックし、感想も手を挙げて発言します。

そんなやり取りの中、私はずーーっと考えていました。
自分がこの作文を読むことで今後どんなことが起こるだろう。白い目で見られるんじゃないか、私を見る目が変わってしまうんじゃないか、今までと違う態度をされてしまうんじゃないか。

そろそろ最後の発表者になるだろうという時間です。私は勇気を振り絞って手を挙げました。

「この作文を読むことで私に対する見方が変わるかも知れません。私の覚悟だと思って聞いていただければと思います。」そうお伝えしてから作文を読み上げました。

読み終わってから6人もの方からフィードバックをいただきました。内容はここには敢えて書きませんが、涙が出るほど嬉しく(必死にこらえました)、私を勇気付けるものでした。

私は以前刺青と共に生きるということというブログでこう書きました。

『自分でコントロールできない他人が持っている負のイメージ、印象を、あえてテーブルの上に出すことはしません。そうすることが“気遣い”だと私は考えます。』

今回私が作文を読み上げたということは、元受刑者であるという負のイメージを、産業カウンセラーを受講している皆さんにぶちまけたということになります。

なぜそのようなことをしたか?理由を挙げていきます。

 

人を色眼鏡で見るようでは、いいカウンセラーにはなれない

私は産業カウンセラー養成講座で共に学ぶ方たちを、戦友だと勝手に思っています。

産業カウンセラー養成講座では、カウンセラー役、クライエント役、観察者役に分かれて実際にセッションを行います。
観察者はカウンセラーとクライエントのやり取りをどのように感じたか、良かったところも悪かったところも、気付いたところを全てフィードバックします。

やったことがないので、どんな人も出来なくて当たり前です。予めテキストやeラーニングで勉強をするのと、実際にやってみるのとでは全く違うんですよね。ダメ出しというか、たくさん指摘を受けるわけです。

グループセッションでは感じたことを飲み込まずに伝える、それが相手のためになります。

講師の方から、カウンセリングを受ける人は本当に色んな人がいると聞いていました。その方たちの言葉に耳を傾け、寄り添うのが我々カウンセラーだと。

クライエントに対して「それはおかしいのでは?」と思うことがあっても、それは一旦横に置いておく。

いま、ここで、クライエントのために。それがカウンセラーにとって大切なことです。

今共に学んでいる皆さんには、私というかなりイレギュラーな経歴を持つ人間をどう扱うか、カウンセラーになる前から学べる絶好の機会だと思いました。

元受刑者を見たり実際に話をする機会なんて、なかなかないと思うからです。

同じ時期に産業カウンセラーを学ぶのは、何かの縁だと思っています。私という人間を通して皆さんに何かを掴んでほしい、感じてほしい。

共に学ぶ皆さんが良いカウンセラーになるために、私の経歴から何かのヒントを掴んでいただければ思ったのが、一つ目の理由です。

 

戦友に対して、自分を偽りたくない

先ほども書いたように、私は産業カウンセラー養成講座で共に学ぶ方たちを戦友だと思っています。その戦友に対して、自分を偽ることができなかったというのが二つ目の理由です。

参加されている皆さんを見ると、本当に真剣に取り組んでいるのです。
皆さんは私と違って毎日仕事をしながら講座を受けています。仕事の合間にeラーニングを受けて課題をこなし、私だったらとっくに音を上げているような状況の中でも一生懸命取り組む姿に、私は尊敬の念を覚えます。

養成講座は約半年間、自分が依存症者で元受刑者だと言わずに過ごすこともできたかも知れませんが、皆さんの真剣な受講ぶりを目の前で拝見させていただき、自分に嘘はつけないと思いました。

ただ、私のカミングアウトを聞かされて、不快な思いをした方もいらっしゃったかもしれません。

過去に犯罪に巻き込まれたり、何かの事件の被害者だったりすれば、元受刑者の私に対して大きな不信感を持つでしょう。

それでも私が依存症者で元受刑者だと発表したのは、自分自身のエゴでもあります。

 

相談業を生業とする依存症子の覚悟

ホームページが少しずつ出来上がるにつれて、「ようやく本格的に活動するときが来た」という実感が湧いてきています。もちろん今までも真剣にブログを書いていますし、真摯に相談に乗らせていただいております。

それらを依存症子の“生業”とする覚悟を、自分で量りたかったというのが三つ目の理由です。

やりたいという気持ちだけが先行して、空回りするのは避けたいです。
足元を固めてちょっとやそっとのことでは崩れない強い土台を作る。植物や盆栽、家屋と同じでしっかりとした土壌があってこその上物です。

産業カウンセラー養成講座の受講者と講師を合わせて20人ほど、そのたった20人の前でカミングアウトをしただけで、自分のメンタルがすり減ったり崩れるようでは、私はまだまだ人の相談に乗れる器では(段階では)ないということになります。

カミングアウトしたことで腹が据わったというか、これからの活動に自分で喝を入れることができました。

今日は依存症や受刑者から話が逸れてしまいましたが、前科者や出所後の方のヒントになるブログになったのではないかと思います。

後ろからついて回る犯罪者、前科者、元受刑者というレッテル。それを一生背負う覚悟はあるか?投げ出さずに向き合う覚悟はあるか?

足元がふらついていれば、また犯罪に手を染めるでしょう。ブレない自分を作っていく、これが再犯を犯さない絶対条件だと私は思います。

 

※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりましたの内容を、加筆修正して再掲載したものです。

原本のサイトはこちらです。読者の皆さんからのコメントなども、ご参考になさってください。

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