前回のブログでは、出所後の苦しみと依存症を理解してもらえない依存症者の苦しみは似ていると書きました。
コメントをいただきましたので紹介します。
「やっぱり家族は家族会に行って、ちゃんと依存症者への恨みつらみを吐き出さないといけないと思った」というご意見。
「依存症はれっきとした病気だから適切な治療をしないと繰り返す、出所するときに医療機関を紹介してくれるといいのに」というご意見。
私もこの二つのご意見に賛同します。
怒りも辛さも憎しみもぶちまけろ!!
依存症者のご家族も受刑者のご家族も、ご家族の中だけで抱え込まず、信頼のおける第三者に聞いてもらうことが大切です。依存症者、受刑者への怒りも憎しみも裏切られた辛さも、何もかも“ぶちまける”のです。
これはもう何度もブログに書いていますが、依存症者や受刑者へ間違った支援をしないように家族会へ行く、依存症の知識がある「家族以外の第三者」に自分の行動が間違った支援になっていないかを確認してもらうのは本当に大切です。
刑務所は受刑者が罪を犯した背景を知っているけど、敢えて更生のアドバイスなどしない
違法薬物や窃盗で逮捕されても、警察では依存症の「い」の字も出てきません。警察も依存症について知ってはいるものの、「あなたは依存症だからここを出たら病院に行きなね」なんて言ってくれません。(そんな中でも教えてくれる親切な警察官はいます)
薬物または何度も窃盗で刑務所に来る受刑者を対象に、依存症の教育が行われます。
私は窃盗で初めて受刑したので、刑務所では依存症について何も言われたことはありません。
始めに移送された拘置所では、ドクターショッピングや依存症について教えてもらえましたが、それはたまたま良い刑務官と医務の先生に巡り合えたというだけです。本当にラッキーでした。
犯罪になる依存症としては他に痴漢や盗撮などの性犯罪、放火がありますが、これこそ本当に依存症の「い」の字もなく、本人自らが依存症だと気付かなければただ刑期が終わるのを待つだけとなってしまいます。再犯が多いのも頷けますよね。
自分の問題を考える時間と場所を与えてくれる、それが刑務所の本来のあり方
これは実際に私が受刑中に感じたことです。
刑務所は自省をする場所です。刑務所側から「依存さんはなぜここに来たの?二度と来ないように○○と○○について考えてみましょうね!」なんて言ってくれません。学校みたいに課題が出るわけじゃないんです。
受刑期間に他の受刑者を見て何を思うか、感じるか。自分で問題に気付いてどう改善しようとするか。それしかないんです。
栃木刑務所で役職の高い刑務官との面接、「審査会 」があったときのことです。
「初めての受刑で刑務所に来てどう思いましたか。色んな人が居るでしょう。」そのあとはっきりこう言われました。「今のままだとあなたはまたここに戻ってくることになる。それでもいいんですか?」
この言葉は本当に重かった。何人もの受刑者を見てきた刑務官の言葉は本当に重いのです。
私のこれまでの怠惰な人生を、何事も投げ出し続けた人生を、完全に見透かされていると思いました。“そんな舐めた姿勢で人生を歩んでいるとまた必ずここに戻ってくるよ”、そう言われている気がしました。
これ以上は何も言われず、あとは自分で考え、気付いて己を変える努力をしろ!という意味だと私は解釈しました。
「早く帰ってきてね」などの甘い言葉が、同じことを繰り返させる
例えば受刑者のご家族は「あなたが○○だから刑務所へ行ったのよ!」と言いたい気持ちをグッと堪え、「どうしてそうなったのか自分で考えてみてください。」と考える機会を与えて、自省をする方向へ促してほしいと思います。
刑務所や留置場での唯一の楽しみは面会と手紙。こんなことを書かれたらショックです。私も夫からこのような手紙が届いたときは大泣きしました。
問題から目を背けて「早く帰ってきてね」と甘いことを言っても、また同じことを繰り返します。
仮に犯罪を犯さなかったとしても、犯罪を犯すような思考になってしまった自分自身に目を向けなければ、この先決して幸せにはなれない。私はそう思います。
支える側は答えではなくヒントを与えて
自分のやったことを棚に上げて「じゃぁどうすればいいんだよ!俺の(私の)悪いところ教えてよ!」と言われるかもしれません。そういう時は例えば、同じ罪名で逮捕されたり服役した人の本やブログを探して差し入れるのも一つの方法です。東野圭吾さんの「手紙」でもいいでしょう。
とにかく本人の更生、依存症からの回復の「ヒント」を与えることが更生のカギなのです。
私は小学校4年の夏休み、塾の算数の問題集を解いていて、面倒だったから後ろに書いてある答えをそのまま書き写しました。(笑)
その答案を見直しても、問題を解いていないからなぜその答えが出たのか分からない。答えだけ知っていても意味が無いのです。
どうしてその答えが出たのかを考えるプロセスが、一番大切なのではないでしょうか。
そして考えた時間、自省をした時間は必ず自分の糧になります。
私自身、刑務所で考えたこと、反省したこと、過去を振り返ったことがしっかり今に活きています。
「刑務所へ行くなんて時間の無駄」と思う人もいるでしょう。でも刑務所へ行ったから今の私がある。刑務所で過ごした時間は、私の人生に必要な過程だったと思っています。
※この記事は碧の森運営者、依存症子のブログ「依存症子 好き放題を続けていたら受刑者になりました」の内容を、加筆修正して再掲載したものです。